物 語
気付けば、自分は上も下もわからぬ暗闇の中にいた。
果たしていつからここにいたのか、
そしていつまでここにいるのか。
聲はどこにも屆かず、
殘された意識さえ暗闇に溶け落ちるかと思えたとき、
一條の光が射す。
誰かが呼ぶ聲が聞こえる……
そんな思いに駆られ、
必死に光に手を伸ばした先にあったのは
見知らぬ奇妙な星空だった。
そして、その腕の中にいたのは
天を指す二本の角と赤き瞳の少女。
止めどなく血を流し生死の境をたゆたう少女は彼に問う。
「黒い仮面……? あなたが……私の……」
血に縛られし一族の姫と
名を失いし男の運命への叛逆が始まる。